試用期間中でも社会保険に加入させないといけないのか?未加入にする方法は?
最終更新日:2016/04/25
「新規採用した社員を試用期間中は社会保険(健康保険・厚生年金)に加入させていない」という新規クライアントに出会うことがあります。
その事実が分かればすぐに、「それ違法ですよ。従業員満足度が下がるだけで良い事はないので、やめてください」と伝えています。
企業側から、同様の人事相談はたまにあるのですが、結論を先に言います。
試用期間中であっても、社会保険の加入は義務づけられています。当然ながら雇用保険や労災保険もです
ダメな社労士が変なアドバイスをしている企業もあります社会保険は二ヶ月以内の期間を定めた雇用契約であれば、加入させる必要がないと聞きました。アホかと。。
試用期間を二ヶ月で設定し、原則として試用期間で契約満了という雇用契約書でやっているので大丈夫だと社会保険労務士に聞きました。
いや、経営者がアホではなく、その社会保険労務士ですね。
おおかた、社会保険料の削減を相談されてそのようなアドバイスをしたのでしょうが、二か月以内の雇用契約による適用除外は試用期間という概念はないんです。本当に二ヶ月で雇用が終わるときに適用するもので試用期間と有期雇用契約とは違います
調査が入れば、一発で是正勧告ですし、裁判されたら即負けです。ただの違法操業。
説明します。試用期間というのはですね。
「通常の解雇よりも広い範囲での解雇の自由」が認められているというだけでして、試用期間満了時に本採用拒否をしても結局、法的に「解雇」なんですよ。顧問の社会保険労務士だけではなく、裁判に詳しい弁護士からも話を聞けば分かります。
※(三菱樹脂本採用拒否事件・最高裁判決・昭和48年12月12日)の判例で決められたのは、試用期間満了で「解雇できる」条件です
ここに関しては別途書きますので、話を社会保険に戻します。そもそも試用期間というのは何かと言えば、、、
試用期間後も継続して雇用することを前提としています。だから、社会保険の適用除外となる有期契約とはまったく異なるわけです。変なアドバイスを受けている時は
社長「いや、そうは言ってもうちの社会保険労務士が。。。」
と思われるかもしれませんが、ほとんどの社会保険労務士は裁判経験もなく、労働法を社会保険労務士視点と弁護士視点から見ているわけではありません。
弊社は提携している弁護士がおりますので、裁判で争えばほぼ100%負ける労務管理は勧めません。
今回のように未加入の裏技のような形で試用期間を利用する方法を勧められていたとしたら、社会保険労務士を変えた方がいいでしょう。(いなだ社会保険労務士事務所は手続き代行はしませんが、労務相談のみの顧問契約は可能です)
法的な知識不足云々だけではなく、「従業員満足度」という目に見えないものの怖さを知らないからそのような事を言うわけです。
たとえ、脱法的な方法として無理矢理適用させたとしても、その二か月間社員とその家族はどうするのでしょうか?
国民健康保険に入らせ、月に5万くらい保険料を払わせ、国民年金に加入する手続きもさせ年金も納めさせるのでしょうか?
そもそもこういうことをしたいと考える理由として、よくあるのが
試用期間中に、辞める人が多くて、社会保険を加入させていたがそのたびに保険料をとられて経営的に厳しいとか言った理由です。
これが経営者側の行動の原点であれば、やはりアホです。(その場合は、経営者とこの行為をアドバイスした人)
本質は何か?を考えてください。
1.試用期間中に社会保険を未加入に出来ないかの裏技を探す変えるべきは「1」ですか?「2」ですか?
2.試用期間で辞めるような人を採用するという採用の仕組みや社内の改善
どちらが将来会社のためになりますか?
「1」と「2」のように問題をすり替えたらダメなんですよ。「1」を選び社会保険労務士と心中したい会社はいないと思います。
追伸
これまで、いなだ社会保険労務士事務所は、労働保険や社会保険の手続き代行をしなかったのと、全国にクライアントがいるので、社会保険労務士としての普通の仕事は受けていませんでした。うちは、基本、採用か しか見ませんので、クライアントが自社で探した社会保険労務士と顧問契約をされていましたが、本件じゃないですが、「木を見て森を見ず」というか「会社の将来を考えた正しい経営アドバイス」をしていない事が何度かありました。
当然ながら、真剣にそういう視点を持っている社会保険労務士もいますが、どちらかと言うと少数派です。業界の質にも関わってきますので、少し労務管理の件も採用に関するところは書いていこうと思います。